【46回目】加熱殺菌と冷却のHACCP構築

安全性の科学的な検証
前号で事例として取り上げた腐敗臭の出た惣菜は、真空パック後に加熱しチラー水で冷却していた。腐敗、あるいはそこまでいかないまでも臭いが出る原因は二つある。加熱不足と冷却不足だ。
真空パック後に熱湯で加熱する方法は一般的だが、長年経験的に製造している工場も多い。昔から行なっていて問題は出なかったのでそのままなのだ。しかし、食材や気候、生産量などの変化によって製造環境は微妙に変わるので、安全性を科学的に検証しておく必要がある。
加熱殺菌の検証は、まずは今まで行なってきた方法で行う。初めに、熱湯から引き上げた製品のうちの数パックを取り出す。取り出すのは最も下にあるものや中心部の加熱がされにくい場所のものにする。次に、一つのパックに中心温度計を差し込んで温度を測定する。ノロウイルスも含めた安全温度である85℃以上になっていればよいが、それ以下だと危険な面がある。ノロウイルスを外せば75℃以上でよく、「大量調理施設衛生管理マニュアル」ではこの温度で1分以上とある。しかし、あまり高温になると味の劣化という品質面の問題が出る。低温長時間殺菌なら、例えば65℃になってから30分維持しているかを5分ごとに数パック取り出して破壊検査で確認する。
冷却の検証も、今までやってきた通りに冷却し、投入時のチラー水の温度と冷却後のパックの中心温度を見て、短時間に10℃以下まで下がっているかを確認する。「対リュオ調理管理衛生マニュアル」では、30分以内に中心20℃付近あるいは60分以内に中心10℃付近とある。
CCPの設定
このような方法で安全性を確認するが、前号の惣菜の事例では、加熱、冷却、あるいは両方の複合問題が原因になっているので、調理の状態をいくつも変化させて製品の中心温度を観察する必要がある。
加熱や急速冷却は、熱湯やチラー水の温度、パック形状(丸い/平たい)、投入パック数、積み重ねの状態(広げて入れられる/幾層にも重なってしまう/接触してしまう)などによる違いを把握する。また、冷却はこの例では氷を使っているので不安定で、時々氷が不足するという恐ろしい要素があるので、どれだけ氷が少なかったら不良になるかのテストが必要だ。賞味期限が3日ならその倍の6日まで、5日なら10日までの経時変化を観察し、パックを破ってにおいや味の官能検査と細菌検査を行う(表1・図)。

これだけの検査をした結果、製品ごとの熱湯殺菌の湯槽の初期温度と加熱時間、チラー水の投入前温度と冷却時間が決まり、この二つがCCPになる(表2)。湯槽と冷却槽の容量が違うものが別にあれば、それぞれのCCPは違ってくる。
これらの検証によって、安全で安定した製造が可能になってくる。この検証があれば、ロットごとに中心温度を測定する破壊検査をしなくてもよい。この検証は年1回程度の頻度で行う必要がある。

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