【50回目】HACCP義務化<3>工場規模と段階の進行例

米国の規模別の段階と日本の小規模工場での簡略化
HACCPの義務化は、食中毒の多い食品と魚介類からスタートしている国が多い。米国では1994年に食鳥肉とこれを使った製品に導入され、96年に食肉検査新規則として公布、98年に施設規模に応じて段階的に規制が実施された。水産食品も初期の導入義務対象になり、95年にHACCP規則が公布されている(図1)。
食肉での導入時の段階は、加工工場の規模により次の通りであった。

大規模(従業員500人以上)→1年半で導入義務
中規模(従業員10人以上500人未満ないしは年間売り上げ250万ドル[約3億円]以下)→2年半で導入義務
小規模・零細(従業員10人未満)→3年半で導入義務
ここで注意が必要なのは「使った製品」という部分で、食鳥肉なら加工品も対象になっていることだ。日本では食肉の場合、一番の元となると畜場は既に義務化へのステップが始まっている。その後の加工品は、部位別カット肉への加工、その後のスライスパック、そしてハム・ソーセージまでとカテゴリーがあるが、これら全てが対象になるのか、そして規模別の段階はどうなるかがこれから決まることになる(図2)。これらの検討は2017年末まで行われるようだ。
また、大手事業者やと畜場などは「A基準」として国際基準を厳格に適用する一方、中小・零細業者などは「B基準」として一部を簡略化する方向だ。簡略化とは、一般的衛生管理を中止として、シンプルな食品製造について危害分析をせずに「あらかじめ推奨されたCCPを用いる」、あるいは「目視による確認もできる」といったことだ。

小売り段階への義務化
日本のHACCP義務化について、「最終的に小売り段階まで持っていく」という発表がなされた。そのため、小売りやフードサービス業界に混乱している面があるようだが、これは「HACCPには金がかかる」という従来からある誤った認識が原因と思われる。清掃・洗浄をすることで清潔な環境にしたり、安全確認をチェックしたりするために特別な費用はかからない(温度計や記録用紙などの道具は必要になるが)。また、金属検出機などの装置がなくても、小売り段階では安全な環境があればよい。
海外のリテールHACCPでは店舗段階でどのような形になっているか、例を示す。
米国→保健所関係のスタッフが監視のために店舗を回って点数を付け、A・B・Cの3段階(Aが優良)を決め、そのラベルを店頭に貼る(写真1)。
イギリス→食品小売店ではコメント付き、フードサービスではコメントなしの5段階の衛生レベル表示(5が最優良)を店頭に貼る(写真2・3)。
デンマーク→スマイルマークを使った4段階表示を店頭に貼る(写真4)。
では、日本のリテールHACCPはどのような管理・監視体制になるのか、次回解説する。

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