【72回目】ISO/TS22002-1のハード面の要求事項に対応できない場合<2>陽圧

工場内の空気差圧
ISO/TS2202-1の6.4「空気の質及び換気」には「特定の空気圧差は維持されなければならない」、また10.2「微生物学的交差汚染」のe)には「空気差圧」とある。
これは工場内を陽圧構造にするということで、工場内の気圧が高ければ外部からの汚染や虫の侵入を防ぐことができる。よって、工場の清潔ゾーンになる製造エリアの気圧が最も高いのが理想的であり、そうすれば周囲にある倉庫や付帯施設がある汚染ゾーンからの汚染を抑えることができる。また、外に対して工場全体が陽圧ならよいことになる。具体的な気圧差の数値要求はないが、一般的に10〜20ヘクトパスカル程度が適当なようだ。
FSSC22000の要求事項では工場内を陽圧に保つことが必須になるが、実際には逆に陰圧になっている所も多い。特に古くからある工場や増設を重ねてきた工場の場合、陰圧になってしまっていることが多い。その場合、空調で調節できるなら解決は簡単だが、空調の大掛かりな改善が必要になると対策にかなりの費用を伴うこともある。
気圧は、測定器がなくても、境目の扉を少し開けて、どちらに気流が向かっているかを調べてみればすぐに分かる。軽い紙をぶら下げてみればよい。
工場内を陽圧に保つ対策
●重めのビニールカーテン
シャッターなどの開口部を開けた時に外気が入ってくるのを抑えるため、まずは「開けたらすぐ閉める」というルールを徹底することが基本となる。このルールは単純だが、守られていないところが結構多い。工場点検で開けっ放しになっている扉について確認すると、入出荷が頻繁でどうしても開けっ放しになるのが習慣化してしまうことが多いようだ。
対策として、まずは扉の所に厚み0.55mm程度の重めのビニールカーテンを垂らす。このとき、防虫効果の高いグリーンのビニールカーテンを使うとより効果的だ(写真1)。

また、エアカーテンも併用すると効果的だが、騒音で近隣からクレームが来ることもあるし、費用も高価になる。そこで、開口部の外側の上に扇風機を設置して、風を下に送ると防虫効果がある(写真2)。

●気圧ダンパー
清潔ゾーンにダクトがあると、ダクトを動かした途端、気圧が逆になってしまうので、気圧ダンパーを設置する方法を取ることも多い(写真3)。これは重しをつけた風圧スイッチで、気圧が逆転するとスイッチが入り、強制的に空調の風量が多くなるよう切り替える装置だ。

●インターロック
二重にしたシートシャッターを二つ組み合わせ、両方一緒には開かないようにする。これを設置する場合、シャッターとシャッターの間に捕虫器を付けるとより効果的だ(写真4)。

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