【76回目】食品偽装
食品偽装のタイプ
FSSC22000の追加要求事項で対応に苦慮するのは、一般的に食品偽装の部分だろう。このタイプの追加要求は食品防御(フードディフェンス)と食品偽装で、食品防御に付いては入場者への対応や関しカメラといった対応で理解できるが、食品偽装についてはどういったことをすればよいか、迷ったり分からなかったりするところが多い。偽装のタイプは一般的に7つほどある。
①希釈→「薄める」という偽装。濃度を薄めればすぐに分かるので、濃度はそのままで薄めるために、グレードの低いものを混ぜることになる。例えば「高付加価値をうたう天然ミネラルウォーターに、何の価値もない井戸水を混ぜる」など。
②すり替え→例えば、食用油に再生した食用油を混ぜれば、濃度はそのままで低コストにすることができる。希釈と一緒にする。
③隠蔽→隠すこと。例えば「色を隠すために、認められていない発色剤を使う」「牛ひき肉の色を良くするために、低コストの馬肉を混入し発色させる」「ニンジンの葉を使うと食肉製品などが鮮度の良い色になるので無添加でこれを使う」など。
④認められていない増量、強化→例えば「水で増量した牛乳のタンパク質含量を高く偽るためにメラミンを加える」「容認されていない添加物を色や食感を良くするために使う」など
⑤虚偽表示→食品偽装で最も多そうなのが、産地偽装だ。「日本国産の穀物類の製品のはずなのに、製造工場の裏に回ったら海外からの穀物梱包用の廃棄段ボールがある」といったもので、最近の審査ではごみ置き場を慎重に見ることが必須になってきている。食品安全の審査なのに、ごまかしの有無の調査が増えているといった現状だ。
⑥グレーマーケット製品→グレーマーケットとは、盗品の横流し、廃棄品の横流し、低グレード容認国への輸出製品を例えば日本に流す、など。この対応でメーカーが最近困っているのは、不良品として廃棄処分に回したものが倉庫経由で横流しされ一般のマーケットに出てきてしまうことを防ぐために、廃棄処分品を焼却が終わるまでどうやってメーカー側が追跡するかだ。焼却まで追わなければならないためコストがかかる。あるメーカーでは「廃棄処分品が出たら担当者が焼却工場までついていく」という手順を決めているが、時間も手間もかかり大変だ。手順書を作って実施できるようにし、記録を残さなければならない。FSSC22000でこれを審査されることもあり、対応されていないと不適合となり、構築を要求される。
⑦偽造→例えば「HACCPの承認や認証を得ていないのに、HACCPで管理しているように装う」「有名ブランド製品をまねた製品を製造・販売する」など。
廃棄製品の処理対応の例
⑥グレーマーケット製品の対応策の一つとして、GPS(位置)情報を入れたスマートフォンの写真を使う方法がある。
まず、廃棄対象品を積み上げた山と箱のラエルの接写、それに製品パックの接写、そのどれかに担当者の顔を入れた写真を、10分以内といった短時間に一度に撮る。その後、運送業者の車に載せたときの写真と、焼却場に着いたときの写真を運送業者に、そして焼却施設で処理しているときの写真を数枚まとめて焼却業者に撮ってもらう。全てGPS情報を入れた写真にしておく。この写真を全てメールしてもらえばよい。一カ所で行った作業は時間差で分かるし、それぞれに位置情報が入っているので、ごまかしはできない。
事例として、埼玉県秩父のミネラルウォーター工場の出荷の様子を撮影した(写真1〜3)。写真データに位置情報が入っているので、これをブラウザで検索すると、撮影した場所をプロットした地図が出てくる。
受け入れも出荷も両方が偽装の対象
偽装のない原材料を仕入れるようにするのはもちろんだが、自分の工場も、偽装を出さないための仕組みを同じレベルで構築して置かなければならない。
最近、自動車や鋼材、耐震対応製品など多くのメーカーで、検査における偽装が発覚したが、組織がそのようなことを起こす状態になってしまったら企業の存続に関わる。内部監査までいかないでも、「現場で偽装など考えもしない」という真面目な環境をつくっておくことが必要だ。