【79回目】HACCP制度化への対応<1>

HACCP制度化は認証ではない
「HACCPが制度化されると、認証はどうするのか?」という疑問を抱いている食品企業が多い。ところが、厚生労働省のウェブサイトに「HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」が掲載されている程度で、それが見つけにくいこともあり、混乱している企業も多く見られる。
制度化は「HACCPの認証を取る」ものではない。全ての食品工場や飲食店、調理を伴う小売店では保健所の「許可証」(写真1)が必要だが、2021年6月からこの更新をするときに、保健所によって「HACCP7原則の考え方に基づいて、衛生管理計画の作成や実施がなされているか監視指導が行われる仕組み」になるのだ。

前述の「Q&A」には、「営業許可の更新時や届け出の際に衛生管理計画を確認することは考えられますが、衛生管理計画は許可の可否の判断基準には含まれません」とあるが、もし衛生管理計画を行わない場合は「まずは行政指導が行われます。事業者が行政指導に従わず、人の健康を損なう恐れがある、飲食に適すると認められない食品等を製造等した場合には、改善が認められるまでの間、営業の禁停止などの行政処分が行われることがあります」とある。
制度化の意味と対応
「何でHACCPなどというものが必要になるのだ?」という疑問を持つ人もいるが、これは運転免許証と同じだ。プライベートな敷地の中で自動車の運転をするのに免許は要らないが、公道に出れば免許証が必要だ。そして、運転免許は少し勉強と練習をすれば誰にでも取得できる。同じように、食べるものを家庭内でどう扱おうと自由だが、多くの人に対して販売するためには安全な管理をしなければならない。求められているのはそのための許可で、「今までよりも安全にするために、国際的な基準であるHACCPを取り入れるようになる」ということだ。
欧米の多くの国のHACCP制度化(義務化)に比べて日本は15〜20年遅れていたが、東京オリンピック・パラリンピックを契機に制度化に踏み切れたということになる。
HACCP制度化への対応は、6〜7年後の許可証の更新時か、定期的な保健所の立ち入り検査時に審査される(例えば16〜22年の許可なら22年の更新時)。大規模な食品工場や飲食店などは立ち入り検査時や早めの対応を要請されるかもしれないが、小規模施設は更新時になるだろう。保健所は数年で全ての施設を回る予定なので、小規模施設はこの期間に順次ゆっくりと切り替えていくことになる。
小規模向けと大規模向け二つのカテゴリーの手引書
小規模のリテール(小売りとフードサービス)と工場の事業者は、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(18年までB基準と呼んでいた)のための「手引書」でHACCPの導入を行う。小規模事業者は「製造及び加工に従事する者の総数が50人未満の者」という案で進んでいる(19年4月時点)。食品工場の80%ほどがこの規模になるという。
この手引書は厚労省のウェブサイトで「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」で検索すると。38業種があり(19年4月時点)、今後も追加される予定だ(写真2・3)。もしこの業種の中にない場合は、比較的近い業種のものを使えばよいという。

これ以上の規模の事業者は、「HACCPに基づく衛生管理」(18年までA基準と呼んでいた)でHACCP導入を行う。これはHACCP12手順によるもので、国際基準だ。厚労省のウェブサイトには18業種が出ている。
保健所の確認や指導も手引書が基準
手引書については、「難しい」「分かりにくい」「量が多い」「見る気がしない」などの声があるが、営業者側も指導者側(保健所)も、同じ参考書を使って制度化を進められるので、混乱は少ないというメリットがある。担当者の違いによる混乱や衝突も少なくなるだろう。現在、行政サイドで行われているセミナーにもこの手引書が使われている。
そのほか、「金がかかるのではないか?」「自治体認証とどういう関係になるか?」「ISO22000、FSSC22000、JFS、SQFを認証取得しているところの扱いは?」などなど疑問はいろいろあるので、次回に解説する。

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