【56回目】HACCP義務化の基準B

米国のウニ加工小型工場の例
米国で水産食品のHACCP義務化がスタートしたのは1997年である。小型工場に対してはセミナーが十分に行われていて、多くの工場がセミナーを受けてからHACCPを構築したということだった。
この少し後に、米国東海岸のポートランドからさらに北に行ったまちにある日本向けのウニの加工工場の視察に行った。この工場では、水揚げしたウニを開いて身を洗い、トレーパックしたものを日本に送っていた(写真1)。
加工工程を見せてくれたが、缶切りのような形をしたステンレスの道具でまずはウニを開く(写真2)。そして中身を取り出した後(写真3)、洗浄して綺麗にするのだが、この洗浄水の温度(6℃以下)がCCPになっていた(写真4)。

加工室の横にチラー水設備があり、その外側に水温の温度計がある。温度を見ると5℃程度。HACCPを始める前はこの水温がいいかげんで、6℃以上になることがいくらでもあったようだ。「ようだ」というのは、それまで測定をしていなかったのでよく分からないとのこと。洗浄水温が高いというウニの鮮度が落ちて品質劣化につながるので、以前はミョウバンを入れて劣化を防いでいたが、現在は5℃程度の低温に安定させることで鮮度が落ちず、ミョウバンを入れなくてもよくなり、結果的にウニの味が良好の状態で日本に納品できるようになったと喜んでいた。
危害分析リストの表はなく、HACCP関係の文書はごく薄いフォルダーに入っているだけ。作業場にあるのは作業台とシンプルな道具だけなので、金属が入る余地は全くないということで、金属検出機は設置していない。基本的に、一般的衛生管理で清掃・洗浄して環境を清潔に保つことで生物学的危害を抑え、安全だけでなく品質アップにまで繋がっていったことになる。
魚介類の表面温度をCCPにしている例
日本の基準Bを先取りしているような例なのだが、魚介類を加工しているある小型工場では、丸で仕入れた魚をフィレや切り身にしてホテルやフードサービスに納入し、貝類は身を取り出してパックしている。この加工で重要なのは、製品の温度を上げないことだ。
そこで、表面温度6℃以下をCCPにしている(写真5)。この温度は前述のウニのチラー水と同じだが、6℃を超えると細菌の増殖スピードが急に速くなるためにこの温度となる。魚介をさばき、コンテナに入れ、冷蔵庫に入れる直前の温度を6℃以下にすることで、安全と品質を確保している。また、冷蔵配送車の庫内温度も測定している。金属検出機はない。

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